ワインを科学する vol.1 『酵母』

こんにちは、TAOスタッフ井上です。

寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?

 

今回のテーマは、ワインについて。連載vol.1です。

vol.1は、ワインを創る「酵母」について。人類よりもはるか昔から生存する生き物「酵母」。そのミクロの世界に迫ります。

 

太陽と雨風にさらされ育った葡萄に、「酵母」という生き物が生を与え、産まれるワイン。

生を与えられたもの故、その味は一通りというわけにはいかない。葡萄本来の味、温度、湿度、期間、全てが味を変化させる。

 

ワインの製造過程を簡単に言うと、収穫された葡萄を粉砕し、そこにワイン専用の酵母菌を加え、酵母菌が十分にアルコールを出すまで熟成させて完成する、というのが流れである。

酵母がアルコールを作るしくみは、実は誰しもが高校時代に触れたことがあるだろう化学式によって簡単に理解することができる。

C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2 CO2

そう、酵母による糖の分解式だ。これはアルコールの生成式であるのと同時に、酵母の生存活動でもある。酵母は糖分と少量の酸素によって生存する。つまり、ある飲料がお酒として生を授かるためには、原料には糖分が必要なのだ。思えば、ウイスキー・焼酎・日本酒といったお酒も、原料は麦・芋・米であるし、糖分が非常に多く含まれている。この化学式を見ているともう一つ気づくことがある。1molの糖が2molのアルコールを生成する。つまり、原料の糖分の濃度が高ければ高いほど、アルコール度数の調整が利く。どのワインもアルコール濃度が8~15%程度であるのは、原料の葡萄に近い割合で糖分が含まれていたということだ。(蒸留を行なえばもっと濃度は高くなるのだが、それはまた別のお酒になるのでここでの言及はしない。)当然、酵母の活動を途中で止めれば、アルコール度数は低くなり、糖分が残る。この調整をすることで甘口ワインと辛口ワインを区別することができる。実際、酵母が活発に活動できるのは18℃~30℃であるが、冷蔵しても過熱しても活動を停止させることができる。また、酵母はアルコール濃度がだいたい20%以上になると自身の生産したエタノールにより死滅してしまう。なんとも悲しい生物である。

 

ワインは極めて歴史の古い酒の一つである。その醸造は新石器時代に始まり、時代が進むにつれ改良が繰り返され、リキュールや他のお酒を誕生させるきっかけともなった。人類が地球に誕生したのは約200万年前だと言われているが、酵母の類である微生物はそのもっとはるか前から生息していた。6000万年も前にワインの原料である 葡萄が繁茂していたことが化石より確認されているというのだから、 葡萄がワインに変化していたというのはおそらく確実であろう。人間が産まれるよりも前にワインがあったというのだから、地球というのは面白い。

 

TAOスタッフ 井上

 

P.S.

実は酵母菌、普通にAmazonでも売っていて、自家製ワインを作ることができます。

しかし、日本の法律で1%以上のお酒を造ると違反になっていしまうので気を付けてください。

ワインを科学する vol.1 『酵母』」への2件のフィードバック

  • 上記の化学式についてなのですが、化学平衡を考慮した上で調整しやすいのですか?

  • 匿名さん

    コメントありがとうございます。

    化学式について化学平衡を考慮するとのことですが、
    アルコール発酵は非可逆反応のため、化学平衡は存在しません。
    ですので、温度や酵母の量によって、一度生成されたアルコールが糖に戻るということもありません。

    反応速度については、酵母の量、糖の量、適切な温度や圧力などで幾分速くなります。
    しかし、記しました通り、アルコール濃度20%以上の環境で酵母菌は生存できませんので、その反応速度も、アルコール生成が進むとともに遅くなっていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です